ウエッブジャーナル日本海
通巻38号[2003/10/10]
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≪今号の記事≫
家作りの現場から〜風を繋ぐ家〜
家作りの現場から〜風を繋ぐ家〜
裏山の岩肌・大樹に溶けこんだ家
風。風情、風景、風物や風流、和風に洋風、現代風に昔風って言い方もある。こ の〜風の「風」って何やろう。広辞苑を紐解くと、 吹く風以外に「趣(おもむき)」「体裁」「様式」といった言葉が並ぶ。熟語の 「風」の部分に広辞苑の意味を重ねると、フ〜ンと何 となくの理解はできそうや。簡単に言えば「〜らしさ」か?
家とか町をつくるということは、実はこの「〜らしさ」、「〜風」を繋いでいく 作業やと思っとる。家は、住む人それぞれの「その 人らしさ」を繋いでいく作業の末、「〜家風」という次の「風」が現れる。更にそ れが近隣に漂う「〜区風」とか「〜町風」といった ものとの繋がりの中で、「〜家」と近隣とのふさわしい情景を生みだす。そうして どんどんと周辺との繋がりを発展させながら「〜地 方風」、「〜国風」となり、やがて「アジア風」とか「西欧風」といった地球的広 がりに連なっていく。「風」の繋がりは、こうした 空間的な意味だけでなく時間的にも広がっていく。「現代風」、「昔風」、もっと 細かく「明治風」とか「天平風」、場合によっては 「未来風」なんてのもある。家や町の風情をつくる時、このことを頭に置いて考え ていくと大失敗は少ないんじゃなかろうか。逆にも し全然考えないとすれば、きっと散々な結果を招くに違いない。
以前こんなことがあった。あるサービス施設をつくるのに、企画した人はフィン ランドをテーマにした施設をプレゼンテーションし てきた。外観デザインはもちろん、食材もフィンランドのテーマに沿ったものを近 隣の農家で生産させ、サービスしていこうというも のやった。しかし、「近隣の農家」といったくだりでもわかるように、近隣に広が るのは過疎の進んだ典型的な日本の農村風景やっ た。ここにフィンランド?!おお、結構や。で、サービスするのは妙齢のフィンラ ンドのお嬢さん?民族衣装も着せる?ん?どこから 連れてくるんや?ほんでフィンランドは、どこまで「フィンランド」にするん や???
近年、テーマパークと称したこの手の施設がどんどんダメになっていくのを待た ずとも、 周辺の状況を考えない施設がどういう経過をたどるかは想像に難くなかった。過疎 の農村では、その状況や風情が少なくともマイナス に働くようなものは造るべきではない。難しいことかもしれんが、風情が応援して くれるようなもの。若いピチピチギャルでなくて、 爺様や婆様がそこに居ても何の違和感のないような計画をすべきや。そうでなけれ ば相当の資本力を持ってしても、違和感のあるニセ 物の域を出ないんや。
こういった無謀な計画は、一時日本全国に蔓延していたわな。ここに垣間見るこ とができるのは、その地にある「〜風」に対する敬 意の欠落なん違うやろか?家族相互の「風」を大切にし、近隣の「風」、歴史の 「風」、向こうの、更にその向こうの「風」に敬意と 想いを繋ぎながら家や町並みをつくっていくことは、自分も含め取巻く環境全てに 対して敬意を深めてゆくことに他ならん。快適な暮 らしや住環境を望むなら、ちょっと穏やかに気持ちを整えて、いろんな「風」に想 いを向けてみてはいかがかな。
(株)藤原工務店
安藤瀞和
このコラムのコンセプト
自然体の暮らしの器として住宅を見るとき、意外と不合理なことがたくさんある。 しかし建築という特殊なものだからと深く考えずに見過ごすことが多い。 そんなことを自然体建築道の修行者の視点で愚痴る。
安藤瀞和(あんどうとろわ)のプロフィール
建築素浪人。自然体建築道の奥義を極めたいと修行に励んでいる。師はいない。
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