ウエッブジャーナル日本海
通巻52号[2004/05/21]
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≪今号の記事≫
家作りの現場から〜手抜き工事〜
家作りの現場から〜手抜き工事〜
某年某月某日、某御仁から「あんた!今日までに手抜き工事を1度もしたことが無いと誓えるか!」と問い詰められることがあって少し困った。「困った」のは「手抜き工事」という言葉の持つ意味じゃった。それを考えずに答えてしまうと結果が悲惨なものとなることは百も承知で発せられた「問い」でもあった。
作るものは完成度の高いものを目指すが、完璧なものではないと思う。瑕疵(※)もあれば配慮の不足や勘違いといったものもある。しかし、それらはその後のメンテナンス等でリカバーすることでより完璧に近づけるものだし、法律的でも義務付けられている。それ故それらに至る一連の行為を「手抜き」とは認識していない。そもそも「手抜き」とは「相手をだまし、相手に不利益を与えようとする『悪意』に発する行為」だと認識している。その意味でいえば輩は「手抜き」をしようとしたことは一度たりと無い。おおむねこのような意味のことを答えたと思う。
この「手抜き」という言葉、巷では製品に不具合があると意外に簡単に使われておるんじゃが、「欠陥品」以上にズシンと堪える言葉じゃ。「欠陥品」という言葉には技術者やメーカーにとっては己の「未熟さ」を露呈してしまう恥ずかしさを持つが、「手抜き」という言葉にはそれ以上に「人間性への疑い」が問われているわけで、恥ずかしいどころではなく人間として企業としての存続の原点に触れる。改めて見回せば、建築技術者の置かれている環境がいかに軽んじられていることか。誠心誠意仕事に打ち込んでいる職人・技術者が、いかに多くの場で「欠陥」「手抜き」という言葉に、唇をかんで耐えていることか。
柱に埋め込まれる梁先端部
見えない箇所にも工夫が凝らされている。
真の職人や技術者にとって、我が分身のような作品にそのような態度で臨めるわけが無い。先日もある左官職人がこんな話をしておった。
「○○さんや△△さんとこの壁、こないだ気になってソ〜っと見て回ってきたけど、まだまだしっかりしとったわ。もう20年もっとになるから、自分は見た目すっかり変わってしもうて気付かれることもないしな。ハッハッハ!」 珍しい話ではない。皆誇りをかけて仕事に携わっているのやから。
昨今の「欠陥住宅/手抜き工事の見破り方」のTV番組やハウツー本などの在り方は、かえって真実を惑わせているようにすら思う。地元風土を知り抜いた職人や技術者の経験や実績は、世の「欠陥指摘のハウツー」に優るとも決して劣るはずがないのに、TVの画面に映る先生や著者の言うことのほうが正しいとする風潮はどうじゃ!その影響を受けて発せられ、最大限の侮辱を与える言葉、「手抜き」。善良な職人、技術者は泣いておるぞ・・・。
※瑕疵(かし):その種のものとして通常有すべき品質・性能に欠けるところがあるか、又は当事者が表示した品質・性能が備わっていないこと。
(株)藤原工務店
安藤瀞和
このコラムのコンセプト
自然体の暮らしの器として住宅を見るとき、意外と不合理なことがたくさんある。 しかし建築という特殊なものだからと深く考えずに見過ごすことが多い。 そんなことを自然体建築道の修行者の視点で愚痴る。
安藤瀞和(あんどうとろわ)のプロフィール
建築素浪人。自然体建築道の奥義を極めたいと修行に励んでいる。師はいない。
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