ウエッブジャーナル日本海
通巻74号[2005/11/28]
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≪今号の記事≫
シェルターからやってきた子猫
シェルターからやってきた子猫
友人のネコを預かる度にいつか自分のネコが欲しいなと思っていたが、なかなか機会 がなかった。ネコといってもれっきとした生き物である。最低でも10年は一緒に暮ら すとなると、やはりネコの命を預かることになるのだから、欲しい!という欲望だけ で衝動買いは出来ないものである。
今回ネコを飼ってもいいところへ引越したのをきっかけに真剣にネコ探しをはじめ た。アメリカでは、もちろんペットショップに行けば血統書つきのネコも飼うことが 出来るけれども、私としては、どうせ飼うならシェルターへ行って、一匹でも命を助 けてあげようと前から心に決めていた。アメリカは世界でもトップクラスのペット王 国でペットを飼う人も多いけれども、実際にペットを捨てる人もまた多いのが事実 だ。そのため、毎年何十万匹もの猫や犬、ウサギなど、挙句の果てには馬なんかも引 き取り手がなく、殺されているのである。そんな彼らの命はお金に変えられないも の、一匹くらいは私が面倒みてあげられる、と心の準備も出来たところで、近くの シェルターへ出向くこととなった。
このロサンゼルスエリアだけでも、公共のシェルター、それ以外にもNPO団体がい くつもあって、その中でも仕事の帰りに寄ったり、お休みの日も開いているところを 中心に私にぴったりのネコを探しに出かけたのであった。
シェルターにはかわいいネコや犬がわんさかいてきっと楽しいところなんだろう、な どと思っていたが、そういうイメージとは全く違っていた。というのも、市が運営し ているようなところは、施設もある程度は整っていて、ネコや犬は1匹もしくは2匹ず つくらいで檻の中に入れられていて、それはペットショップのショーケースのよう。 それこそ人気のあるチワワやマルチーズなんかもいるけれども、彼らはみなとても寂 しそう。檻の前を歩く私に「どうして僕はこんな狭いところにいれられているの!早 くだして!」と目で訴えてくるのがわかる。誰かが迎えに来てくれるから、もう ちょっとまっててね、というしかないのだ。
自分のネコを飼うことには初心者の私は、できれば子猫から飼いたいと思っていたか ら、ネコ探しに結局2ヶ月くらいかかることとなってしまった。こちらは動物に対し ても法律が適用され、例えば生まれてから8週間以内は母ネコと子猫のセットでなけ れば引き取らせてくれなかったり、この期間を超えていても2パウンド(約900グラ ム)を超えていない子猫たちはまだシェルターの中でもお持ち帰り部門には入れても らえないらしいのだ。何回も通ううちに仲良くなったシェルターのボランティアの人 にこっそりまだまだ小さい子猫を見せてもらって、「このネコはこんな性格で、あと 2週間くらいしたら引き取ってもらえるところに運ばれるから、そのころにまたい らっしゃい。」などとアドバイスをもらいながら、何度も足を運ぶこととなった。
もう何度も通った後のある土曜日、私はまたいつものバーバンクにあるシェルターへ 出かけてみた。ネコの部屋に入ってみると、ボランティアの人が遊んでいた黒い子猫 が目に留まった。友人がすかさず見つけて、そのネコがいいよ!といったけれども、 私はとりあえず一通りのネコをみてから、その子猫を抱かせてもらった。そうする と、なんととても大人しいネコでお行儀もいいこと。私のひざの上でも大人しく座っ ていられるし、人や犬が通ってもびくともしない。小さいのに度胸が据わってるな あ、と思いながら30分くらいそこで遊んだ後、このネコとならやっていけるかも、と いう第六感を信じて、彼女をアダプト(引き取る)することにした。
シェルターからアダプトするといってもタダというわけではなく、シェルターでの引 き取り料や予防注射の数々でいろいろとお金もかかることを知った。それに、まだ生 まれて10週間の子猫でも避妊手術を受けることが原則となっていて、こんなに小さい のに大丈夫かなあ、とちょっと心配になったが、手術を行った日にすぐに引き取りに いくことができた。新しいお家にとっても興味があるらしく、まだ麻酔が半分かかっ た眠い目をがんばって開きながらも、子猫は新居をうろうろし始めた。
動物を飼っている人ならわかると思うけれども、ネコという生き物もほんとうに人間 のように性格が一匹ずつ違う。私のうちにやってきた子猫はとっても小さく、黒いア メリカンロングヘアのネコで、足の先がソックスをはいているように白い。あまりに もかわいくてプリンセスのようなので、そのままプリンセスと名づけ、通称プリちゃ んと呼ぶようになった。
プリちゃんはもともとノラ猫だったそうで、ノラ猫の場合、人にいじめられたりして 人間になつかないということもあるらしいけれど、プリちゃんはシェルターに引き取 られた時はまだ本当のベイビーだったので、人間にいじめられた記憶などないらし く、とても人間好きなようだ。それに、初めて会った時と同じで人見知りもしない し、肝が据わっていてとても大人しいのだ。つめを切ったり、毛をとかしてあげたり してあげても静かにしているし、初めてお風呂にいれて上げても、寒がってニャンと 数回声を上げただけで、まったくつめを立てたりしないのには驚いた。
とりあえず、何万匹というネコや犬が殺されていく中、日本生まれの私がアメリカ生 まれのプリちゃんを引き取ったのは、何かの縁。ネコは10年くらいしか生きないと 思っていたら、友人のネコはなんと17年目に突入したという。ネコの1年は人間の7年 に相当するらしいから、17年目といえば、119歳だ!17年も一緒にいたら、いったい 私はその時何歳になっているのだろう、と思うと恐ろしい気がするが、ネコは愚痴ま で黙って側できいてくれるので、「わかってくれるのはお前だけだよ〜」と声をかけ たくなるとネコ好きな友人が言っていた。私もそういえば最近「プリちゃん、聞いて よ〜」と相談相手になってもらっているような気がする。動物を飼うことは自分への セラピーだとも最近気がついた。
シャンディ
シャンディのプロフィール
兵庫県姫路市生まれ。卒業と同時に子供の頃からの夢であった海外生活をスタート。
オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、フィジー生活を経て、現在アメリ カ、ロサンゼルスで暮らす。
外国生活の中で日常の出来事を中心にエッセイを筆記。
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